不妊治療アドバイスブックでは、不妊治療をお考えの方にあてて、当院長が不妊治療に関する技術や考え方などの情報をお伝えしていきます。
採卵時の痛みと麻酔 2019.01.26更新
体外受精には採卵時の痛みや不安が必ずあります。
一般的に、採卵針の径(太さ)が大きいほど痛みは増します。
アクトタワークリニックの体外受精で使用する採卵針は、
最細径針を使用しています。
通常の体外受精で使用される採卵針よりも半分程度の太さ
ですから、採卵時の痛みの程度が少なく、全身麻酔や静脈麻酔の必要はありません。
採卵時間も数十秒でおわります。
そして、卵子の回収率を高めるように、針先にも特殊加工を施しています。
しかしながら、採卵時の痛みは少なからずあります。
当院では、患者様の希望により局所麻酔を行います。
このとき使用する針は、体外受精の局所麻酔専用に開発した極めて細い針を使用しております。
尚、針の開発には、先端の美容外科で使用される針を作成している専門家の協力も受けております。
最小径の採卵針と採卵専用の局所麻酔針といった採卵時の痛みを減らす理論と技術により、
患者様の痛み・不安を少しでもやわらげていただけるかと考えております。
それでも、不安の方には、静脈麻酔下での採卵も行うことが可能ですので、
ご希望の方は、診察時に担当医師もしくはスタッフにご相談ください。
移植周期での採卵(ドミノ周期) 2017.10.01更新
ドミノ周期とは、
自然周期(クロミフェン周期・レトロゾール周期等)で育った卵子を採卵し、
体外受精・顕微授精を行います。
その後、胚移植当日に分割卵もしくは胚盤胞に成長すれば、
それらの受精卵を胚移植します。
成長しなければ、
凍結分割卵もしくは凍結胚盤胞を融解後に胚移植を行います。
妊娠可能期間を1周期も無駄にすることなく、
治療を進めることが可能です。
最新式タイムラプス型インキュベーター 2017.06.30更新
アクトタワークリニックでは、
最新式タイムラプス型インキュベーターを新たに導入しました。
静岡県内では初めて導入される機種です。
独自開発されたカメラで、
培養中の受精卵を確認することができます。
【参考動画】
また、受精確認等のためにインキュベーターから
受精卵を出す必要が無いため
気層や温度変化も少なくなり、
安定した受精卵の成長環境が構築できます。
前世代のタイムラプス型インキュベーターと比較して、
精密な気層管理や細かい写真撮影が可能となり、
さらなる胚盤胞発生率の向上や
グレードにこだわらない
新たに妊娠しやすい
胚の選別方法の一助になることが期待できます。
EMBRYOSCOPE+ TIME-LAPSE INCUBATOR
着床不全の新しい治療法 GM-CSF 2017.04.26更新
<胚盤胞と子宮内膜とサイトカイン>
胚盤胞と子宮内膜の情報伝達は、
妊娠や特に着床を開始する重要なファクターです。
サイトカインは胚盤胞と子宮内膜のコミュニケーションを促すと考えられています。
1.GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)とは?
GM-CSFは、主に女性の胚盤胞や子宮内膜などで
自然に分泌されるサイトカインの一種で、
細胞の増殖や分化を促進します。
2.サイトカインとは?
細胞が産生する活性タンパク質のこと。
様々な種類があり、細胞の増殖・分化・機能の発現などに関与しています。
<染色体に問題が無い胚盤胞移植の出産率は?>
アメリカ生殖医学会(ASRM)やヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)において、
染色体に問題がない胚盤胞を移植しても
出産率は60~70%程度であることが多数報告されています。
<なぜ、染色体に問題が無い胚盤胞を移植しても妊娠継続しないのでしょうか?>
妊娠が継続しない(流産)の原因を突き止めることは容易ではありません。
妊娠した女性の40%は、流産を経験されているといわれています。
流産は、染色体だけでなく遺伝子や子宮の異常など様々な要因が考えられます。
また、着床不全の原因を突き止めることも容易ではありません。
現在、着床時期の胚盤胞と子宮内膜の情報伝達物質である
サイトカインの欠乏やそのバランスの異常も流産や着床不全の要因の一つと考えられています。
当院附設の生殖発生医科学センターでは、マクロファージ等の他大学との共同研究により、
多様なサイトカインの中でも
細胞の増殖や分化を促進するGM-CSFが
着床時期に最も重要なサイトカインの一つであると考えております。
<GM-CSFと着床とは?>
通常は着床時期にGM-CSFの発現量が増加しますが、
着床不全の方や流産を繰り返す方ではこのGM-CSFの発現量が少なく、
GM-CSF濃度は低いままのことがあり、
着床不全や流産の原因として考えられています。
また、月経周期や加齢により、GM-CSF濃度が変化することも考えられています。
そこで当院では、胚移植時に用いる培養液に着床時期に必要である
細胞増殖因子であるGM-CSFと
細胞接着因子であるヒアルロン酸を
配合することで、
自然妊娠が成立する着床時期の
子宮内膜及び子宮腔内環境に
近づけることができると考えています。
<GM-CSF含有培養液を用いて胚移植が有効だと考えられている方>
ⅰ 自然妊娠しにくい方。
ⅱ 着床不全が考えられる方。
ⅲ 胚盤胞を2回以上移植しても着床しない方。
ⅳ 化学的流産または臨床的流産を2回以上繰り返す方。
(化学的流産:妊娠反応のみ陽性。その後、妊娠が継続しなかった場合。)
(臨床的流産:胎のうまたは胎児を確認。その後、妊娠が継続しなかった場合。)
ⅴ 原因不明の不妊症の方。
GM-CSF含有培養液に関してのご質問は、スタッフまでお知らせください。
尚、GM-CSF含有培養液を使用した胚移植は予約制とさせていただいておりますが、
都合により使用できない場合があることをご了承ください。
<参考文献>
Toshiki Matsuura et al. J Assist Reprod Genet. 2002 19(12): 591-595.
Seshagiri PB et al. Am J Reprod Immunol. 2016 75(3):208-217.
不育症とは 2017.04.03更新
不育症とは
妊娠はしますが、
2回以上の流産、死産
もしくは生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡によって、
子供を持てない状態をいいます。
ご心配の方は、
厚生労働省のサイトをご参照ください。
アクトタワークリニックでは、不育症の検査、治療も行っております。
葉酸 サプリメント 2016.10.18更新
葉酸は細胞増殖に必要なDNA合成に関与し、妊娠を考えている方に必要なビタミンです。
妊娠初期は、胎児の細胞増殖が盛んであるため、この時期に葉酸摂取が不足すると胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが考えられています。
妊娠がわかってからでは遅いこともあります。
日本では2000年に厚生労働省から神経管閉鎖障害のリスク低減のために妊娠の可能性がある女性は通常の食事からの葉酸摂取に加えて、栄養補助食品(サプリメント)から1日400μgの葉酸を摂取するよう通知が出されています。胎児の発育のために4週から12週までが最も葉酸の摂取が必要な期間と定められています。しかし、妊娠に気付かずにいることもありますから、妊娠前から1日400μg(0.4mg)の摂取が必要とされています。葉酸の必要性は、母子手帳にも記載されています。
また、葉酸はサプリメント等での摂取が過多になると新生児の呼吸器障害の発症リスクが高まることも報告されています。
ですから、葉酸をサプリメントで摂取する量は1日400μg(0.4mg)にするのがよいでしょう。